越境リーダーシップ Meet Up LIVE!」第二回はオムロンの竹林一さんをお招きして開催しました。これまでにいくつもの新規事業の立ち上げや事業再生を経験されてきた竹林さん。オムロンが創業期から持つイノベーションへの考え方をもとに「起承転結人材モデル」や「忍者イノベーション」など、ユニークな表現で企業内のイノベーションを支える仕組みを紹介してくださいました。本レポートでは特に印象的だったことを中心にお伝えします。

「越境リーダーシップ Meet up LIVE!」とは、自らの想いを起点に境界を越境しながら価値創造に挑戦する「越境リーダー」を毎回一人招き、現在進行中の活動、これからの展望を伺い、実践者同士の創発につなげていくための取り組みです。

イノベーションに部署は関係ない

「課題を解決し、新しい価値を創造する全てがイノベーションである。総務であろうが人事であろうがイノベーションを起こせる。」と話す竹林さん。実はオムロンの創業者の言葉だそうです。自動改札機やスイカに代表される電子カードの開発など様々なイノベーションを起こしているオムロン。このイノベーションに対する考え方が成長し続けているオムロンの強さなのだ、と感じさせる一言です。

オムロンに「社会を変えるシステムをつくりたい」という思いを持って入社した竹林さん。彼が最もイノベーティブだと感じたのが「管理職6年目で3ヶ月間、会社に来なくてもいい」という社内制度。部下に権限を付与する、そして部長クラスの社員に「改めて自分はオムロンで何がしたいか」を考えてもらうためにあるそうです。社員一人ひとりの熱量や創造性の高さを維持するための、とても画期的な仕組みだと思いました。

価値創造を支える仕組み「起承転結人材モデル」

さらに価値創造を支える仕組みとして「『起承転結人材』が欠かせない。」と竹林さんの話は続きます。

「起の人は0から1を思いつく、妄想設計をする人。承の人は1を10や100にする、構造設計をする人。転は、1を100にする過程でリスクの最小化と利益の最大化を考える人、そして結は成果が出るまできっちり実行し続ける人です。」

「起承」と「転結」の相互不理解や連携の無さがイノベーションの壁になる。これは企業内だけでなく、日本のベンチャー企業と大手企業との間にも言えることだそうです。竹林さんは、他にも、起承転結型人材の観点から見た、日本の企業の現状と課題を指摘します。

「起の人は、大企業だと大抵浮いてます。内部の人から見ると遊んでいるように見られたり、誤解されがちです。ここにくる越境リーダーたちも、このタイプが多いのではないでしょうか。」

ただイノベーションの原点は、起の人だけではないと竹林さんは話します。起承転結の連携。特に、起の人の発想を概念化/事業構造化し、転結につなげる承の人材が要だと。イノベーションは簡単には生まれない。だからこそ事業の構造化や、様々な人との連携に繋がる、共感を生むストーリーづくりを担う承人材が必要で、竹林さんは今、アイデアを仕組みに落とす、承人材の育成に力を入れているのだそうです。

ただ多くの人に会うのではなく、良質なネットワークの構築が重要

本イベントの後半は対話のセッションになります。いくつかのやりとりをご紹介します。

「イノベーションを起こす人材は育てられるのか?」

自身の経験を振り返りながら「事業の根本を考える機会をたくさん与えられて学んできました。実はデザイナーになりたかったのですが、どの軸で切って世界観をデザインしたら、会社もお金を出してくれて成功するか?軸の切り方をひたすら考えていました。経験を重ねて経営の視点も身につけましたが、(自分は)ずっと事業の幹を考えてきた承の人です。」という竹林さんの話から、人材を育てるには「考える機会」の提供が重要だと気づきました。

「イノベーションを起こすには、大勢の人と会うことがひとつのポイントなのでは?」

この質問に対し、ネットワーク業界でエンジニアをやっていた際の一場面を例に、そうではなく良質なネットワークを構築する大切さを指摘されていました。

「かつて、新しいシステムをつくることを上で、8割ぐらいできたものをつないでテストしたら、品質がどんどん落ちていくと言った経験がある。言いたいのは、0.8の人がたくさん集まって、繋がったとしても 0.8×0.8=0.64にしかならないということ。イノベーションを起こすには、1.0以上の熱量を持った人が集まり、繋がり、創らないといけない。」

1.2×1.2×1.2×1.2で「起承転結」が連携をとれるような文化や仕組みを作っていく。まさにこれが日本の大企業が新しい価値創造を行なっていくための、重要なポイントとなるのでしょう。

まとめ

今回の Meet up LIVE!では、大企業の中でイノベーションを起こすには「起承」だけでなく「転結」の存在も欠かせないこと。何より、起承転結の連携を実現するための仕組みを考える「承」人材の育成と、イノベーティブなカルチャーの醸成の大切さを実感できました。竹林さん、貴重なお話をありがとうございました!

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