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新たな社会のしくみをつくる価値創造、越境リーダーたちは何をしているのか

情報技術で、新しい「しくみ」や「価値」を創造し、より豊かで調和のとれた社会の実現を目指し、事業展開するNTTデータと「新たな社会のしくみをつくる価値創造」をテーマに2015年12月11日に開催された越境リーダーシップカンファレンス。越境リーダーとして活躍している株式会社日本政策投資銀行 蛭間 芳樹氏、全日本空輸株式会社 深堀 昂氏、株式会社NTTデータ 矢野 亮氏を登壇者に迎え、想いを実現するために組織横断的な取り組みをどのように行えばよいのか、様々な障害をどのように乗り越えるかを参加者と共に2時間にわたり語り合いました。本レポートでは、その概要をご紹介いたします。

越境リーダー‘s STORY 何が私を動かしているのか

第一部では「越境リーダー‘s STORY」と題して、越境リーダーたちになぜ、このような活動を始めたのか、どのような障害があり乗り越えてきたかなど自分たちのSTORYを語っていただきました。

「防災ムラ」の存在が新しい挑戦の契機に
日本政策投資銀行 蛭間 芳樹氏

「気づいた課題は何とかしたい」「課題は解決できる人がすればいい」「人生一回きりだから楽しまないと」という想いが常に流れています。大学では都市災害軽減工学を学んでいたのですが、「防災ムラ」の存在に気づいたことが自分にとって新しい挑戦の契機になりました。防災は社会全体の課題であるのに、金融や経済と防災を繋いでいる人がいない。防災は防災だけで完結してしまっている。

海外でもバングラディシュでは毎年洪水や災害で20万人30万人が死ぬ中、「あの人達は死んでいい」と話されるのを聞いておかしいと思いました。そして日本で目の当たりにした中越地震。人を守るはずの建物が人を殺している。そこに憤りを感じました。そして金融や経済と防災を繋ぎたいと考え、日本政策投資銀行に入行しました。そしてBCM格付け融資を担当することになったとき、これがやりたかったことだと感じ、自分の意志で現在も取り組んでいます。蛭間氏のSTORYの詳細はこちら

飛行機を通じて世界の人々に夢と感動を
全日空株式会社 深掘 昂氏

飛行機が大好きで、ずっと運航本部技術部に入りたいと思っていました。そして念願の全日空に入社。飛行機を通じて世界中の人々に「夢」と「感動」を届けることを追い求めていました。しかし飛行機に乗って移動できる人たちはほんの一部しかいないという事実。どうすれば本当に世界中の人々に飛行機を通じて、「夢」と「感動」を届けられるか。悩んでいたときに貧困者支援のNGO、Room to Readの代表John Wood氏と出会いました。彼らのように世界の社会課題解決に奔走する人たちに飛行機を使ってもらえれば、彼らを通じて世界中の人々に「夢」と「感動」を届けられる。

当初会社からは「面白くない」と言われ、「No」ではないが「Yes」でもないという状態でしたが、ブランディングにつながる活動だとアドバイスをいただき、マーケティングとしての挑戦に切り替えました。一筋縄ではいかず部長はOKだけれども副部長は全員NOといこともしばしばありました。そんな紆余曲折を経て昨年、半年間実施し日本の大手代理店で作った案よりも3,3倍のプロモーション効果を出すことができました。うまくいかないこともありますが、自分を奮いたたせるのは「今の全日空のビジネスモデルでは73億人には届かない」という強烈な問題意識です。
深掘
氏のSTORYの詳細はこちら

脳科学で従来のビジネスに「目」を
株式会社NTTデータ 矢野 亮氏

面白いことは振ってくると思っていたけれども、案外そうではないようなので、自分でやるしかないと思いたち、産学連携で脳科学マーケティングをやってみようと始めました。マーケティングで言われる、人々の“Say”と“Buy”の間にあるギャップに脳科学が入ることで、従来のビジネスに「目」を与えられるのではないかと考えました。

大規模システムにずっと関わってきましたが、残りの人生考えた時に「これでいいのか」という不安や焦りが出るようになっていました。一方で「新しいことを考えろ」と言われ続けていたとき、脳科学と出会い「自分がやらなければいけない、やるべきだ」と直感的に思ったのです。また漠然と海外には負けたくないとも。しかし既存ビジネスを抱えている身ではすぐに着手できません。そこで社内の「Next時間」(新しいことを考える取り組み)を使ってビジネスになりそうなことを周りの人に伝えることから始めました。

そもそもこの領域は素人がすぐにビジネスにできる内容ではありません。有識者と組む等色々考え、産学連携に至りました。産学連携を進める中で学んだひとつ大きな考察は「発言をプラスに読み替える」ということ。

  • あなたの趣味でやっている場合じゃない
    →趣味と思えるほど楽しく取り組めていいね
  • 既存業務で大変な思いをしている人もいる
    →次のネタを探す時間がないから任せたぞ

そんなことを繰り返しながら挑戦を進める毎日です。

リーダーシップをめぐる対話 どのようにして新たな価値創造に取り組むか

第二部では小グループに分かれ「組織の中で新たな価値創造を行う際の障害や行動」をテーマにディスカッションを行いました。そして第三部では登壇者によるパネルディスカッションと質疑応答を行いました。ここではその中でも印象的だったやりとりをご紹介いたします。

適切なメンバーを集めることは大事だと思うが、それぞれの本業があるなかで、どのように集めたらいいのか?

(矢野)R&Dの人を入れたかったら、彼らの成果になるもの、お土産を用意してあげるようにしています。

(蛭間)仲間にしたい人の管理者に説明に行く。そして自分の「思い」を伝える。そして本人には「今置かれている場所でパフォーマンスを出すように」と言っています。

(深堀)自分が主管部署にいなかったので4年間やっている間に本業ではないというジレンマがありました。そこで、とにかく本業の成果にこだわり、自主活動でやっている「Blue Wing」に関しては評価を一切求めませんでした。

外堀を埋めるために、工夫された点は?

(矢野)外から埋めてから中のリソースを引っぱるという行動は常にやっています。

(蛭間)最初に1件実績が出ると変わる。日本が晒されている危機を見せられたときに、それを断る理由はない。特にボードメンバーは。

(深堀)偉い人にお墨付きをもらってもなかなかうまくいかない。現場は担当者が回しているから。現場の人のリスクを減らす、手間を減らすことは重要でBlue Wing以外のところで実績を出すことを大事にしました。

社会課題の解決を目指すとき、どのように誰からお金をもらいますか?Win-Winの関係をどのように作ればいいのでしょうか?

(深堀)Blue WingをウェラブルカメラによるANAのプロモーション(マーケティング部門に異動後のプロジェクト)と比べるとウェラブルカメラによるプロモーションの方が短期的には効果を出せますが、Blue Wingの浸透には一定の時間がかかります。一方でそれをやることで、グローバルなマーケティング施策のためのコストが結果的に削減できるということを伝えています。そしてライバル企業を引き合いに出し、やらないリスクを伝えます。すると『そのリスクはない』と言える人は社内では少ないので、効きますね。

(蛭間)“そういう判断”をする企業の意義を伝えますね。

いきなり上司に提案しても理解されない場合、どうしたらいいですか?

(矢野)リアリティを持って伝えていくことが大事です。

「熱意」がなくなることが一番課題だと思いますが、自分たちの内的要因は?

(深堀)外部のコミュニティが心の支えになりました。そのコミュニティでの常識は社内の常識ではない。社外の応援者を作っておくことが大事です。最後は自分との葛藤でYou Tubeで困難を乗り越えた人の話を見たりしています。

(矢野)自分は単純なので社内でヨイショしてくれる人を探して励ましてもらっていました。灯を絶やさないようにし「何のために自分はこれをやっているのか」を考えています。

(蛭間)自分の会社はいらないと思っていたところからスタートしました。「自分で全部やらなくてもいい。リソースは外から集めればいい」と思っています。

まとめ

2時間では足りないくらい、登壇者と参加者の想いが溢れる場となった、越境リーダーシップカンファレンスNTTデータ編。NTTデータ 鳥海様からは「興奮を感じました。本人の熱い思い「人生は一度きり」「何かやらなきゃ」という気持ちが重要ですね。今日は「私が」という言葉をたくさん聞きました。思いを強化する仲間を探すこと。そして、やはり経済効果があるということが大事なのだと思います。社会的課題解決のための起業ほど、ビジネスモデルを作る。そうでなければコソコソやる。会社の風に飛ばされないようにする。様々な人の成功体験を聞くことは大事ですね。」との言葉をいただきました。

これからも越境リーダーシップカンファレンスでは各企業の越境リーダーたちと一緒に、価値創造に向けた知見を共有、発信していきます。

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